今月の Software Design : 2013/01 ( その2 )

 年始のエントリで紹介した「 Software Design ( 以下、SD ) の記事を全て読んで要約に感想を添えてブログに掲載する」活動の続きです。

 今回は調子に乗って攻撃的な事を書きすぎました。よくこの業界は狭いと言われているので、僕のような雑魚が、この業界の大物が書いている記事に噛み付くと、この先生きていけなくなるかもしれませんが。その辺怖がっていては大物にはなれませんので気にせず書いてゆきます。

 例によって以下のフォーマットで各記事について書いてゆきます。

 

・記事のタイトル
 ( 1 行目 ) 記事の要約
 ( 2 行目以降 ) 感想

 

・第二特集① :FreeBSDLinux、Windows、OS はどうかわるのか?

 長くなるので各章毎に書きます。OS の話では、FreeBSD から GPLv3 のソフトを一掃するという話や、Debian Wheezy のクレジット表記を自動化したといった話など、各 OS 、GNU/Linuxディストリビューションのニュースをコミュニティの中の人が短く解説してくれています。

 gcc は llvm に、make は bmake にといった感じで、FreeBSD 10 のベースシステムからは GPL のソフトウェアを排除しているというのは凄いです。ユーティリティ系 ( binutils とか ) やライブラリ系 ( libc とか ) をこさえるのだけで気が遠くなる程大変だと思いますが。かつて GNU の信奉者達がフリーソフトを唄って 20 年くらい前に歩んだ道を、BSD コミュニティの人達は新たな自由を掲げて同じ苦難の道を歩んでいるのだろうか。

 記事でも触れられていますが、コミュニティの人たちの頑張りによって GNU/Linux のエンターテイメント周りの環境が非常に整ってきています。マルチプラットフォームなクライアントプログラムの開発環境もかなり整備されていて、多くのアプリケーションにおいてもマルチプラットフォーム対応が進んでいます。そんな中、某ソーシャルアプリ大手企業の社若手エンジニアに「クライアントマシンで Linux とかマジ意味不明です (プププ」と言われた時には、一瞬体中の血液が沸騰しましたが大人の対応に徹しました。

 

・第二特集② :ソフトウェア開発はどうなのるのか

 ソフトウェア開発の話では、Web アプリケーションのビューの流行りとフレームワークの紹介と、ドメイン駆動開発の紹介、そして字句・構文解析のツールの発展に伴い独自言語の開発は以前ほど難しくなくなったという話と、コンポーネントのインターフェイスが増えると、(全てのインターフェイスを叩く組み合わせのテストを作ると) テスト工数が倍々と増えていくんで、その辺考えて設計しなさい!という話。最後に、古橋さんのビックデータの話となっています。

 個人的に Web 系についての事情に疎く、またこの辺りは頻繁に新しいフレームワークが登場しては廃れを繰り返しと変化が激しいので、白石さんが書かれたような記事はありがたいです。また「1ページアプリ」が面白かったです。以前に CSS3 に興味を持ち、いくつかの著名なサービスのデザインを見様見真似でコピーして遊んでいた際「みんな同じようなデザインだなー」と思ったのですが、バックエンドの観点から見た1ページアプリの話は眼からウロコでした。

 結城さんの数学のお話は、内容は面白かったんですが例えが悪かったんじゃないかなと正直思ってしまいました。分野や仕事内容によって変わるかもしれませんが、プログラムを書く人間にとって記事で紹介されている数学を使う機会といったら計算量や計算時間に使うケースが一般的じゃなかろうかと。

 

・第二特集③ :情報技術の新しい流れ

 ここでは、MIC の紹介、サイボウズの話、様々なクラウドサービスを使ってシステムを構築する心構えの話、デフレ経済で商売するお話をしています。

 MIC の話は面白かったです。GPU だと利用できるケースが限られてくるため、どうしても手動で最適化を行わなければなりませんでしたが、MIC 使って汎用の超並列演算が出来るかもと思ったらワクワクしてきます。

 谷本さんのマイクロペイメントの話は面白かったのですが。冒頭の「893万円のオナホ云々」のくだりが謎です。恐らく「作り手よがりな高価な製品は売れなくなるよ」的な事をいいたいんだと思いますが、よくわからない値段設定といい、それをニートに売りつけるという話といいよくわかりません。893という数字はヤクザとも読めますがそれもまたこの文脈と離れているようでよくわかりません。IT 業界の値段設定はふっかけだと言いたいのでしょうか。

 あとサイボウズの記事はちょっとヒドいです。沖縄の某 IT 企業(ヤクザ)のようにギャーギャー騒ぎ立てるのは好みではありませんが、この記事はちょっとズルいです。「情報技術の新しい流れ」というテーマで、サイボウズが自社製品を持ち上げるとか茶番もいいところです。

 

・第二特集④ :ネットワーク技術はどうなるのか

 ここでは、自然エネルギー使ったりファンの運転を調整して省エネデータセンターにするという話と、いろんな事知ってるインフラエンジニアが必要だよという話、そして 2012 年は環境としての OpenFlow は流行ったけど、2013 年はこうやって制御するっていう具体的な制御を行うコントローラが出てくるんじゃないかっていう話です。

 太陽光発電の活用って、そんなん焼け石に水ちゃうん?とか思ったりするのですが、これが謳い文句なのかそれとも設置費用に対してちゃんと実益にかなっているのかは不明です。

 

・第二特集⑤ :SIer は生き残るか?

 ここでは「SIer は生き残るか?」というテーマで、SIer に対する様々な見解が書かれています。まず視野が広いエンジニアには生き残って欲しいというミクロな視点からの話と、大型案件を商う (大手 IS) 企業はいいとして下請けを主に扱う中小 ISer はキツイと分析する記事に始まります。神林さんの記事は、SI 業態自体はなくならないという分析をしつつ、SI 業界の(辛い)現実と、これまでの失敗についてバッサリ切っています。それと、仙石さんの視野の狭いエンジニアは失敗するよという話と、清水社長の新しい技術や技法をキャッチアップするアンテナ張っとけという話になります。

 いづれの記事も「いろんな事に興味を持って、いろんな事を知っておけ」という部分で見事に意見が一致しています。記事としては、SI 業界の外に居る自分にも、現状の SI 業界が辛いという事が伝わってくる内容です。神林さんの記事に至っては、歯に衣着せずにボロクソに書いており、読んでいて痛快です。

 それと、仙石さんのお話は(シンプルだという意味で)わかりやすいです。あとこの人は、年齢というものをかなり気にする人のようで、30代エンジニアを非常に残念な感じでいつも語るのですが、20代と30代エンジニアで成長曲線はそんなに違うものかと疑問に思っています( 僕がまだ20代だからかもしれませんが... )。

 

・Qt Quick 入門

 Qt Quick の導入の話。開発環境のインストール、Twitter クライアントで学ぶビューの作成方法についての紹介とキッティングの方法を紹介。

 スマートフォンアプリのビューを作っている感覚でビューが作成出来て非常に面白いです。Qt におけるビューの作成は QML と呼ばれる DSL を使っているのですが、AndroidXML によるビューの作成と違うところは、QML ではビューのフォーマットを設定するだけではなく、マウスのイベントハンドラやビューの状態遷移といった、ビューに関する簡単なロジックも扱っているので、ロジックコードからビューに関するコードを排除できます。

 記事を読んだ限りでは、キッティングの機能などで機能不足があったりと、まだ発展途上みたいですが、非常に興味が湧きました。

 

・インターネットを影で見守る Akamai

 アカマイ・テクノロジーズが全世界規模に展開しているサーバ群を統括する分散アーキテクチャ Akamai Intelligent Platform の設計 ( の概要 ) の話。

 非常に興味深いんですが、話の抽象度が高く、肝心な「どういったテクニックで実装しているか」といった話は隠されたままで物足りない感じです。