今月の Software Design : 2013/05 (その2)

 「今月の Software Design 」の5月号の投稿の第2回目です。

 今回は第一特集の「IT 業界ビギナーのためのオススメ書籍55冊 + α」についての要約と感想です。

 先に感想を言ってしまうと(この特集を読んで4冊も紹介されている本を買っておいてこんな事を言うのも何ですが)、あまりために「ならない」印象です(特に後半)。

 前半(Part1)はみなさん真面目に書いてくれているんですけど、後半 (Part2) があまりに酷い内容です。

 あんまり酷い酷い言っていると技評から怒られそうですが、別に誰に頼まれてやっているわけでもないし、自腹で買った Software Design を読んだ上での率直な感想なので仕方ありません。

 というわけで今回もいつも通り、以下のフォーマットで書いてゆきます。

 

○ 記事のタイトル
( 1 行目 ) 記事の要約
( 2 行目以降 ) 感想

 

○ 第一特集:(Part1) IT業界ビギナーのためのお勧め書籍55冊 + α

 IT 業界の様々な業種の人間が「IT 業界で生きる人間だったらコレ読んどけ」的な事を書いた記事です。古典や定番中の定番といった書籍を取り上げている人もいますが、(「IT 業界ビギナーのための」と言っているからか)比較的最近の書籍を取り上げる人が多いです。けっこう長いので、以下の感想で気になった内容について拾ってゆきます。

 谷口さんが紹介されている『UNISYS の技報』はすごく気になりました。見てみると、解説記事のまとめみたいで非常に面白いです。敷居は高いですが、継続的にインプットできたら基礎体力がつきそうです。

 一世を風靡した新書『おもてなしの経営学』の著者の中島さん。相変わらず文書がめちゃうまです。記事ではドラッガーの著書を推しています。非常に購買意欲を誘う紹介文と手頃な値段と相まって思わず買ってしまいそうです。そんな中島さんが文書作成に関して、理系の大学を出ていれば知らない人はまずいない名著、木下是雄の「理科系の文書作成術」を紹介しています。この本についての紹介は、僕より中島さんの紹介の方が伝わると思いますが、自戒を込めて一言だけ言うと、年に1回くらいのペースで読みなおす価値のある(読みなおすべき)1冊だと思っています。

 湯本さんが紹介されている『楽々 ERD レッスン』という本は初めて知りました。面白そうだったのでつい買ってしまいましたがまだ読んでいません。

 池田さんが紹介されている『情報法入門』は興味深いです。記事では 2008 年出版となっていますが、第二版の出版は 2011 年です。法律は技術の入れ替わりと同じように、常に法改正が繰り返される世界だと聞きます。それに対して本書は昨年改正された新著作権法にも対応した内容となっているようで、今が旬の良書という事で思わず買ってしまいました。

 西沢さんはタネンバウム先生の著書『分散システム 第二版』と『コンピュータネットワーク 第四版』を "歴史書" として紹介しています。確かに僕も multics については、タネンバウム先生が minix について書かれた著書『オペレーティングシステム』で学びました。そんなわけで歴史について学ぶならタネンバウム先生の書籍が良いのかも知れません。ちなみに『コンピュータネットワーク』については、(英語版ですが)第5版が既に出版されているみたいです。

 『計算機プログラムの構造と解釈(通称、魔術師本)』についての柏野さんの紹介文に爆笑しました。

 首藤先生の冒頭に書かれたファッションショーの一節は面白いです。この特集をある側面から深く突き刺してえぐる内容で、これを読んで1ページ前に書かれた内容を読み返すと別の穿った見方で見えてきます。本文ではドナルド・ゴースの『ライト、ついてますか』を紹介しています。紹介文からは内容はあまり伝わって来ませんが、面白そうな本だという事は伝わってきます。先日別の人にもこの本を紹介され、これを機に買って読もうと思います。

 

○ 第一特集:(Part2) IT 業界副読本 -読まずに入れるか!? IT 業界-

 IT 業界で技術系以外で抑えておくための本として、日本のアニメ、コミック、ゲーム、そしてライトノベル等を紹介しています。ザックリと要約すると、プレゼンのネタスライドや話のつかみ、そして職場になれるために、昨今話題のアニメや往年のガンダムネタを交えましょう。そのための素養づくりの為に、見ましょうねという内容です。

 Part2 の内容はちょっと常軌を逸している感があります。。個人の趣味趣向を「これはエンジニアにとって『抑えておくべき』モノだ」と正当化するだけならいざしらず、「だからこんぐらい知っておけ!!!」という押し付けがましい内容には我慢なりません。

 さくらインターネット社長、田中邦裕さんの『とある魔術の禁書目録』によってタイトルロゴが見栄えし、また『侵略!イカ娘』の語尾を「〜ゲソ」とする "イカ語" をまねることでプレゼン資料は華やかになり、いい感じにウケるなどという内容には絶句しました。『魔法少女まどか☆ マギカ』の箇所に至っては、何故エンジニアにオススメなのか紹介文からさっぱり伝わってきません。

 これらのコンテンツにケチをつける気は全くありませんが、エンジニアにとってここで紹介されているアニメやゲーム以上に、職場に早く慣れるため、エンジニアとしての素養をつける意味で抑えておくべき本はあると思っています。

 その役割を十分に担えるものの例が "古典" です。

 例えば、最近アジャイルスクラムといった開発スタイルが流行っているようですが、そういったソフトウェア開発モデルは現在まで試行錯誤している状況です。これまで何に苦しみ、失敗してきたのか、そしてどういった経験則があるのかといった事柄を知らなければ、チームのマネージャーが何に苦闘をしているのかといった事も恐らくわからないのではないでしょうか。そのために『人月の神話』や『ピープルウェア』といった古典から学ぶというのも大切だという主張です。

 若手とは思えない程オヤジ臭い事言っていますが、アニメやゲームで消費活動をするよりもよっぽど効果的な時間の使い方じゃないでしょうか。