ウォレン・ベニス (著)「リーダーになる」を読みました
以前のブログエントリ で、元リクルートの人に勧められた行動経営科学に関する本を読むというところまでを書きました。本のタイトルを書きませんでしたが、ウォレン・ベニスの「リーダーになる」という本になります。
- 作者: ウォレン・ベニス,伊東奈美子
- 出版社/メーカー: 海と月社
- 発売日: 2008/06/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書は、リーダーとはどんな存在で、どのような資質を備えているかについて具体的に書きながら、それでいてそれぞれの事柄についてある種の普遍性があるように思える良いほんだと思います。
ただ普遍性を持たせすぎたためか、観念的になりすぎている件が多々ありました。自分の経験に照らし合わせて共感できる内容については十分に理解できるのですが、そうでない内容についてはあまり伝わってきません。
例えば [第八章:人を味方につける] の人の信頼を勝ち取るリーダーの振る舞いや、部下や周りの人間をヤル気にさせる期待をさせるといった話には、身近や過去に出会った人間を頭に思い描くことで、そこで論じられている内容を十分に理解することができました。
一方で 四章、五章、そして七章で出てくるような話がイマイチよく理解できません。例えば [第六章:自分を広げる] で書かれている真実の話や、若さの話、天才の話など、今の僕には理解することはおろか、そこで言われている事が現実に当てはまるのかどうかすら判断出来ません。これは志や情熱についてなど、更に別の話についても同様です。
(真実の話・・・物事には二つの真実がある。大きな真実と小さな真実である。小さな真実は虚偽の反対であり、大きな真実はもう一つの真実の反対。)
(若さの話・・・若さは齢を重ねることで獲得する。人は若い頃の方が古臭く愚かなものだ。対してパブロ・ピカソなどは 80 年かけて若さを手に入れた。)
(天才の話・・・天才は全てを与え、出し惜しみしない。天才が天才であるゆえんは、この『寛大さ』にある。)
そういう意味で、これらを理解するには、自分は人生経験が足りないのかもしれません。
10年後くらいに読み返すのもいいかもしれません。
本書を知らないけれども、忙しくて読むのがめんどくさい読者のために、以下に本書の要約(メモ)を載せます。
・[第一章] 現状を打破する - 会社ぐるみの不正や、国家元首のスキャンダルが取りただされる昨今、リーダーの存在が重要視される。リーダーが重要視される理由は、組織が正しく機能するように責任を持つのがリーダーであり、組織が成功するかどうかは、トップに立つ人間の器量で決まる。 - 世の中を客観視する件 (ただ世の中を見ていると・・・) - 合衆国の建国の父達は、合衆国憲法の基礎に「公共の美徳」を据えた。しかし今では、公共の美徳より特定の集団の利益が優先されるようになり、最近では個人の関心事が最重要事項になることも多い。 ・[第二章] 基本を知る - リーダーとはどういう存在なのか?ということ - リーダーが備えている基本資質について - 指針となるビジョン:「リーダーは公私において、自分がなにをしたいのかをはっきりと理解している。また難局に直面した時や失敗した時でさえ、自分のしたいことを貫く強さを持っている。」 - 情熱:「リーダーは自分のしていることに愛情を持ち、楽しんでいる。自分情熱を伝えることのできるリーダーは他者に希望を与え奮起させる。」 - 誠実さ:誠実さを構成する3要素 - 自分を知ること - 率直であること - 成熟していること - 信頼:「誠実なリーダーは信頼される。信頼は他者から与えられるもので、信頼を得られないリーダーにリーダーの役割は果たせない」 - 好奇心と勇気:「リーダーはあらゆるものに興味を持ち、貪欲に学ぶ」 - リーダーの特性につて議論している。 - リーダーシップとは何か? - 自分で自分をつくり上げること。自分が生まれながらにして持っているエネルギーや願望を発見し、それに沿って行動するための自分らしい方法を見つけ出すこと。 ・[第三章] 自分を知る - 自分自身によって自分を作り替えるという話 - いくつかの事例を紹介 - 自分は何者か? 何をしたい or 何をすべきか? - 自分を知り、自分をコントロールする人間が有形無形の報酬を得る(と言っている) - 自分自身になる方法、自分が人生の主人になる方法、自分を表現する方法。これを実現するための4つの基本テクニックの話 - 1. 自分の最高の教師は自分自信の件 (学習する動機づけが行われている) - 学習の基本的な動機は2つある。1つは「知らなければならない」という欲望や乾きや飢えを満たしたいという人間の根源的な思い。もう1つが「役割意識」、「あるべき自分と今の自分の乖離」を自覚することで生じる思い。 - 2. 責任を引き受ける(上手く立ちまわる。誠実に取り組み相手の理解を得る。) - 3. 貪欲に学ぶ(今までやった事がない事をやる事を楽しむ) - 本書によると、これは気質の問題だという。怖いもの知らずであること、楽天的であること、自信家であること、そして失敗を恐れないこと - 4. 経験を吟味して真の理解に達する(反省し総括する事。物事(過去の出来事や未来の予定)を客観的かつ構造的に見つめ、分解したり評価したり組み立てたりすること。) * 気になる内容 - ヴァージニア大学ギブ・エイキン助教授の管理職の学習経験に関する研究報告「組織の力学」の一節について 「学習は人を成長させる。人は学ぶことによって知識を得るのではなく新しい人間になる(中略)学ぶというのは、何かを得るのではなく何かになるということなのだ」 - 内部思考型の人間と他者思考型の人間の話 * 疑問 - 誰もがリーダーになる必要があるか? - ヒント : p124 - 誰もがリーダーとなる社会は存続しうるか? - ヒント : p118 - 「集団は多様性に寛容であるべきで、個性を抑圧しなくても結束は可能である」 ・[第四章] 世界を知る - イノベイティブ学習:リーダーの学習スタイル - 未来を見通す - 周りがこう言う or そうするからするのではなく、自分がこうしたいからするという姿勢 - 他人の意見を聞く - 素直になりましょうという話。盲目的な考えに囚われたり、頑固な姿勢では柔軟性が無くなり、時に物事を見誤る。 - 参加する - 物事の結果を享受する側ではなく、結果を生み出す原因の側になる。 - リーダーになるための具体的な方法論 - 本を読め(古典を学べ)! - 自分の肥しを作る - ( 資格や学位よりもリベラルアーツが重要 ) - 自分の直感を信じろ!やりたい事をやれ! - 旅に出ろ! - 旅に出ることで自分の能力を総動員させることができ、能力の発掘ができる。また、環境が変化することで自分の長所や短所を認識できる。 - ユダヤ人の例 : 流浪の民ゆえ卓越した能力を持つ - トマス・ジェファーソンとベンジャミン・フランクリンが旅人だった話 - 自分と対話しろ! - 一日最低一時間は一人で考える時間を作り、自分の可能性について考える - 「ごっこ遊び」をいつしかしなくなった話 (友人と師) - 「どの時代にも師がいないリーダーは居なかった」 - よき師とは・・・ - 本人も気づいていないような資質を見出す教師 - あるべき姿を示してくれ、自分の可能性を広げてくれる人物 - よき友人とは・・・ - 真実を語ってくれる人物(そこから多くの事を学べる) - その人物を支える個人または集団 (学生時代の仲間、戦友、同僚) - e.g. フランクリン・ルーズベルトのブレーントラスト, JFK のアイルランド系マフィア, アイゼンハワーの参謀幕僚 - 間違いをおかせ! - リスクを恐れず決断することが重要。もし間違をおかしたら、間違いを反省し、二度と同じ間違いをしないようにする。 - 最悪なのは、間違いを無かったことにすること。 - これらについていくつかの例を用いて説明している ・[第五章] 直感に従う - 物事を単純に考えようよ。という話 - 直感とは - 絶対にすべき事を一瞬のうちに映し出すビジョン。そしてそれは誰しもが持っているが、リーダーは自らの直感を信頼する。 - 何かに対して手当たりしだいに挑戦し、本能的な勘を信じる。 - 幸運について - 幸運と心構えの関係の話 - 自分にとって最も真実だと思える事を守りぬく、ただ運もそれに関わってくるが、運は大胆な人間を好む。 ( 大胆な人間=心構えができている人間 ) - 大胆な人間には幸運が宿る。 - 真のリーダーと偽のリーダーの話 - アイデアが浮かんだらたとえルールに反するものでも信じなければならない、それができたらあとは自信と勇気。アイデアの実現に必要なものはこれだけ。それが無いのは偽のリーダー。 ・[第六章] 自分を広げる ( - マズローの5段階欲求モデル ) - 物事を吟味する話 (1) - 過去を振り返り、何故そのような事態になったのかを分析すること。 - 一般的に失敗した時に行われることが多いが、成功した時にこそやるべき。 - 過去を振り返り、何故そのような事態になったのかを分析すること。 - 人間は経験を吟味することで感情を整理し、理解し、問題を解決し、前に進めるようになる。 - 経験に振り回されるのではなく、経験を活用する。 - 真実についての話 - 物事には二つの真実がある。大きな真実と小さな真実。 - 小さな真実:虚偽の反対 - 大きな真実:ひとつの真実の反対 - エリク・エリクソンの人間の書く成長段階における様々な葛藤の話 - 経験を吟味し、内なる葛藤を解決できた時、人は独自の観点を持つようになる。 - 独自の観点の話 - 観点とはものごとをどう見るかであり、その人に備わっている固有の視座(見解)にほかならない。 - 自分が何を考え何を求めているかがわかっている人(独自の見解を持つ人)は、きわめて有利な立場に立つことができる。 - 人生の目標設定についての話 - ハーバードロースクールのデレク・ベル教授曰く、具体的な野心や欲望は持たないほうが大事である。むしろどんな人生を歩みたいかを考える方がもっと重要だ。それさえ決まれば残りはおのずと明らかになる。 - 自分自身というもの(自分が何者なのかということ)を表現すること - 3つのテストの話 - 志の話 - 志は誰にも教えられることができない、しかし自分で目覚めさせることができる - 人生の可能性に対する情熱が人を高みにも持ってゆくが、単純な欲望に変わることもできる。 - 志と欲望の違いの話 - 自分を表現することと、自分を誇示することの違い - 情熱の話 - 情熱は周囲に伝染する。自分の意志や信念を堂々と伝えれば、人は自然と集まってくる。 - リーダーには高い能力が求められるという話 - リーダーは業務に精通し、熟達していなければならない。自分の役割や職務を実行するだけでなく、それぞ完全に自分のものにしている。 - その道の達人と呼ばれる人は、自分の仕事を天職とみなし、脇目もふらずにその仕事にのめり込んでいる。またどのようなチャンスをもつかみ、愚行と思われるようなことにも挑戦する。遊ぶように学ぶこと、それこそ最強の学習だ。 - 天才の話 - 天才は全てを与え、出し惜しみしない。天才が天才であるゆえんは、この『寛大さ』にある。 - 戦略的に考える話 - どのような複雑なものでも、それを細かく分解し、核となる部分を抜き出せばそこから普遍化してゆくことができる。どのような立場で何をするにしても、最初に行う事は終着点を明らかにすることだ(登山家は目的地を定めたら、そこから逆算してスタート地点を決めるという)。 - ありふれた人間と勇士の違い - ありふれた人間はすべてを幸福か災厄と受け止めるが、勇士はすべてを試練と受け止める - 小説家カルロス・フェンテス曰く - 若さは齢を重ねることで獲得する。人は若い頃の方が古臭く愚かなものだ。対してパブロ・ピカソなどは 80 年かけて若さを手に入れた。 - 創造の話 - 創造とは個人の領域に属するものであって、集団の領域に属するものではない(友人や家族、あるいは組織といった集団に埋没した青春時代に創造性は発揮されにくいという話)。 - 成長の話 - 知性や情緒の成長は年齢とともに減速するものではない。リーダーはその他大勢とは違い、何かを知りたい、経験したいという欲求をいつまでも失わない。 - リーダーシップとマネジメントの違い - 人に何かをさせるのがマネジメント、人が何かをしたくなるように仕向けるのがリーダーシップ。 - リーダーとして成功するかどうかは、他人をどれだけ惹きつけ、やる気にさせることが出来るかどうかにかかっている。 ・[第七章] 混乱をくぐり抜ける - 正しい判断力は経験によって培われる。経験を吟味し理解し活用する。様々な場面がリーダーの実践の場所となり学びの場となる。リーダーは想定外の出来事から学びを得る。 - リーダーシップを学ぶということは、変化に対処する方法を学ぶことでもある。 - リーダーは実践しながら学ぶ。問題がリーダーを作り上げる - (プログラマと同じじゃね?) - やっかいな上司の話 - 悪い上司、やっかいな上司でさえ学びを得る - ラッキーストアの元 CEO ドン・リッチー曰く「そういう上司に出会うと自分の信念が試される。自分は何をやりたくないのか、何に賛同できないのかがよくわかる」 - リーダーは経験を知恵に変え、組織の文化を変える。 ・[第八章] 人を味方につける - 人に何かをさせる話 - 相手の恐怖心を利用したり脅迫したりすることで、ある程度相手に何かをさせることはできるが、その行動には限界があり、また恨みを買う。 - 人に何かを無理強いすることは出来ないことをリーダーは肝に銘じておくべき。また相手にとらせる行動は、常に自発的でなければならない。リーダーが尊敬でき、また社会に対してなんらかのビジョンを持っていることがわかったなら、部下や社員は自ずと自発的な行動を取る。 - 人を味方につける条件 - 信頼を生み、それを維持するリーダーには次の要素が備わっている。これを備えたリーダーは人を味方につけることができる。 - 一貫性 :リーダーは常に首尾一貫しており、初志貫徹をモットーとする。 - 言動一致:真のリーダーは、自分が支持する理論の通りに生きている。 - 頼りがい:リーダーは重要なときにいるべき場所にいる。個々ぞという時にはいつでも仲間を支援する準備がある。 - 誠実さ :リーダーは、過去に誓ったことや約束した事を必ず守る。 - 優れたリーダーは能力とビジョンと美徳をほぼ完璧なバランスで備えている。ビジョンと美徳を伴わない能力や知識は官僚を生み出す。ビジョンと知識を伴わない美徳は空想家を生む。そして、美徳と知識を伴わないビジョンは扇動家を生み出す。 - ビジネスの問題点の一つは、リーダーのやり方に相手の人間があわせてしまい、組織全体がそれに染まってしまうこと。このようなやり方は縦割り組織を生むだけで効率的とは言えない。社員それぞれのやり方で仕事を進めた方が効率的だ。 - 従来のリーダーは変化の重要性を認識していた。リーダーは変化を進化や進歩と同じものとみなしている。 - 変化に対応することの必然性について - 時代が変われば価値観も変わる、これまで傍流と思われていたものが主流になったりする。そんな中、組織や人がそれまでとずっと同じで居られるわけがない。 - 変化に抵抗する事は天候に抵抗することと同じように無駄である。リーダーは変化を嫌うのではなく、変化を楽しむ。組織の変化だけではなく、自分自身の変化さえも。 ・[第九章] リーダーを助ける組織、くじく組織 - 変化について - 変化を敵視することはない。変化は人を成長させ、組織を救うものだ。組織は変化することで活力を取り戻し、物事の核心に迫ることができる。 - 企業の "リーダー育成" とかって嘘でしょ? っていう話 ・[第十章] 未来をつくる - これまでの話のまとめ - ⑦ の話が興味深い