今月の Software Design : 2013/03 (その5)

 「今月の Software Design 」の3月号の5回目の投稿です。

 今回は、Emacsシェルスクリプト、そして Android/iOS などお馴染みの4つの記事と今月から連載がスタートした「Debian Hot Topics」の要約と感想を書きます。

 フォーマットは各記事、以下の通りになります。

 

・記事のタイトル
( 1 行目 ) 記事の要約
( 2 行目以降 ) 感想

 

Emacs 64bit 化計画

 C++/CLI を使って .NET フレームワークコンポーネントを呼び出す処理を書いて Emacs 連携させる話です。ここでは、オープンソースのパスワードマネージャー KeePass と連携する処理を C++/CLI を使った記述、及び Emacs 側の実装を解説しています。

 .NET 面白そうですが、個人的には BSD よりも縁遠い存在です。また COM のような複雑な仕組みでしか他のプログラムと通信できない機構のシステムを不憫に思うと共に、UNIX がいかに凄いかを思い知らされます。

 

・開眼シェルスクリプト

 ImageMagick を使って画像を ppm 形式に変換して、シェルスクリプトから画像を編集する処理を記述しようという話です。記事では実際に、重ねあわせによる画像合成と近傍画素の平均値をとってモザイク処理するスクリプトを紹介しています。

 テキストファイルで画像変種するとか面白いです。テキストで表現される画像ファイルフォーマットには、記事で紹介されている ppm 形式の他に xpm 形式が有名ですが、かつて xpm 形式の画像を e-lisp から所々の加工を行なって 作ったぷよぷよ を見せてくれたド変態がアリエルに居ました。

 

・iOS アプリ開発者の知恵袋

 iOS アプリのマネタイズの方法と、広告収入モデルで実際どういったやり方でどれだけ儲けたかというお話。

 相変わらず iOS アプリエンジニアさんの知恵は、エンジニアリングよりもマーケティングやマネタイズに使われるみたいですね。この手の話に全然ワクワクしないのは、僕がエンジニアリングの事だけやってればお金がもらえる恵まれた環境にいるからでしょうか。

 SD にこういう記事があるのは良いと思いますし、著者の藤田さんもキチンと売上があるみたいで凄い(多分僕には真似できない)のですが、何だか行き当たりばったり感がぷんぷんします。

 

Android エンジニアからの招待状

 Android アプリのテストツールについての記事になります。まずいくつかのテスト自動化ツールの紹介と、各ツールの開発状況についての紹介をした後、アンドロイド SDK 付属のユニットテストツール JUnit についての紹介と、使用する際の注意点について簡単に解説しています。

 正直あまり良い記事とは思えません。扱っているテーマは面白いですし、記事の前半部分で書かれている各種自動化ツールにどんなものがあって、それぞれが今どんな開発状況なのかという話は非常に参考になるのですが、記事の後半部分の JUnit がどんなもので、何が出来て何が出来ないかという点については、これを読んだ限りではイマイチわかりません。

 いきなり細かい具体的な話が先に来て、後で概要的な話が出てきたり、表で書ける内容をわざわざ文章にしたり、そしてそれが後で出て来なかったりと、構造化されていないため、色々書かれている割に中身が無いと印象付けられるんじゃないかと思います。

 「文句ばっかり言ってるけど、じゃあお前は同じテーマで良い文章を書けるのか!?」と言われると弱ってしまいますが、恐らくここでの問題は、狭い紙面で多くの内容を書こうとしすぎている点じゃないかと思います。また構造的な表現については、僕の 元師匠のブログエントリ が参考になります。

 

Debian Hot Topics

 今月から連載が開始された記事で、Debian の開発ポリシーとメンテナンスの作業プロセスについて紹介しています。開発作業についてはパズルを例にして、依存関係地獄を解く作業について紹介していました。

 ディストリビューションコミュニティでどんなお仕事をしているのかは、どういったソフトウェアと取り込むかを決め、それらの依存関係を解いて、そしてそれらのパッケージを作ってくれる以外にどんなお仕事をしているのか、外からはよくわからないので、今後の内容が楽しみです。

 

・レッドハット恵比寿通信

 Red Hat が提供するエンタープライズ向けミドルウェア JBoss についての紹介記事になります。JBoss とは一体何で、どんなプロジェクトから構成されているのかという内容になります。

 JBoss については、恥ずかしながら名前だけ知っているという程度の知識しか無かったので、JBoss について知る良いきっかけになりました。それにしても Java の世界は広いです。

 記事を読む限りでは IBM WebSphere が競合になるのでしょうか。IBM WebSphere と言えば、えげつない資格ビシネスをしているという事で印象的ですが、調べてみると Red Hat も同じ事をやってるんですね。Red Hat によって JBoss は「安心」を売り物にした飯の種になりますが、JBoss が使われる事で、これを飯の種とするエンジニアが安心を担保するものとして資格を欲しがり、JBoss 環境が更に盤石となるという連鎖が期待できます。こうして、エンジニアとコミュニティ(Red Hat)においてとても金臭いエコシステムが形成されるわけですね。さすがエンタープライズ向け商品は金になるだけあります(実にえげつないです)。